自己憐憫のループから抜け出すために
誰もが多かれ少なかれ、弱さや不安を抱えて生きていますが・・・
たとえばそれらの原因が、病気・メンタル不安定・生きづらさ・家庭環境など・・・
日常の行動に影響するのは当然のこと。
しかし、「自分は〇〇だから…」を理由に、現実逃避するクセが定着してしまうと、人生は停滞してしまう・・・
こんなケースを見かけることがあります。
そして、この「停止状態」は・・・本人が考える以上に実は深刻で、自分が望む未来から遠ざかっていきます。
では、なぜそのままでは将来性がなくなるのでしょうか?
自己憐憫は「行動停止の言い訳」になる
日頃私が耳にする中でも・・・ご自分のメンタル不安定や体調不良(病気も含む)などから、自己憐憫が強いケースによく遭遇します。
実際、病気やメンタル不調があるからこそ、無理が効かない日もあることでしょう。
そんな時は、無理せず休む決断も必要で、当然のこと。
しかし、問題はここから。
「自分は〇〇だから」が習慣化すると、行動の選択肢が急速に減る
最初は一時的な自己防衛のつもりでも、日常的に言い続けているうちに・・・
- 行動しない自分が当たり前になる
- 「できない自分」を守るための理由が増える
- 復活のタイミングをどんどん失う
・・・という状態に陥ります。
これは「意志が弱い」という問題ではなく、思考のクセと行動パターンの問題であることが多いです。
自己憐憫は「現実から目をそらすための、最も心地よい理由」
自己憐憫は、周りからみると・・・一見つらそう、大変そうに見えますが・・・
実際はそれがあることで、本人は「ラク」になる場合も多い。
なぜなら、
- 向き合わなくていい
- 挑戦しなくていい
- 今のまま変わらなくていい
- 失敗の責任を負わなくていい
からです。
そのため・・・これを続けてしまうと、人生は確実に停滞します。
停滞は一時的なものに思えますが・・・表面的にはわからなくても、内側ではじわじわと自分の未来を蝕みます。
自己憐憫は「自分の未来を奪う」ことに気づこう
自己憐憫は「思考停止」を生み、未来の選択肢を消してしまう
「自分は〇〇だから…」が続くと、脳はそれを「前提」として動き始めます。
- 自分にはできない
- 今のままが限界
- 行動しても意味がない
- 他人に比べてハンデがある
- この状況は変わらないだろう
これらの思考が定着すると、「行動しなくていい理由作り」は自分の中で始まります。
すると、未来の可能性がどんどん閉じていく・・・。
自己憐憫は「被害者マインド」を固定化する
「私はこんな状況なんだから仕方ない」
「あの人は恵まれてるからできるんだ」
「私は〇〇だから、無理だと思う」
この思考は本人をどんどん孤独にしますし、周囲との関係も歪ませます。
それを続けているうちに、他者からのサポートも受け取りにくくなり・・・さらに自分の内にこもるという悪循環にもなりやすい。
その 結果・・・「未来を変える力」がなくなってしまう
自己憐憫を続けると、
- 決断ができなくなる
- 行動が遅くなる
- 気力が奪われる
- 「変わろうとする力」自体が消える
未来をつくるための原動力となるものが止まります。
そのため、その状態が続くと人生は停滞し、将来性がなくなると言われる理由です。
私が見てて多いのが・・・「気力が奪われる」の部分です。
たとえ最初は「現状から抜け出そう」という気力があったとしても・・・
自己憐憫が続くと、その気力がだんだんなくなっていきます。
そして、自分にとって「ラクな方」を選ぼうとすることが増えます。
たとえば、本人が体調不良でメンタルも不安定の場合・・・「自分は他のみんなと違う」「自分は大変でかわいそうな状態だ」と自己憐憫する人が多いです。
そして・・・「だから、~できなくても仕方ない」と言います。
自分の状態を改善したいと口では言いつつも・・・その状態でいることで無意識に「自分にとって都合良いなにか」があることに、本人は気づかない場合もあります。
だから、「その状態から抜け出せない理由探し」を始めます。
また、ラクな方を選びたいがために・・・今の自分の状況を理由にしてラクな選択をするケースもよく見られます。
それは、一見自分にとっていいように思えるかもしれませんが・・・実際は自分の未来の可能性をいくつもスルーしているだけであり、その状況に慣れてしまうとそこからなかなか抜け出せない。
自己憐憫してしまう人は、真面目な人も多い
自己憐憫に陥る人は、私が見る限り・・・真面目で責任感が強い人も多い印象です。
それにプラスして・・・思い込みが強く、他人に助けを求めることに慣れていない繊細な部分もあります。
だからこそ、「うまくいかない現実」を受け止めるのが苦しく、「自分は〇〇だから…」の理由を使って、自分の心を守ろうとするのかもしれません。
しかし、実際は自分の心を守るどころか・・・「自分の心が頑張りすぎて限界を迎えた状態」かもしれません。
自己憐憫から抜け出せない例
この状態から抜け出すためには・・・
・「できない理由」と向き合い、「どうしたらできるか?」に変換すること
・小さな成功体験を重ね、自己肯定できるようになること
・周りと比べないこと
これらが重要です。
当ルームでも、自己憐憫が続いて人生が停滞している・・・という内容の場合、上記をお伝えしていますが・・・
停滞がずっと続く人とそこから抜け出せる人に分かれます。
そこにはどんな違いがあるのでしょうか?
自己憐憫から抜け出せないケース①
「できない理由」と向き合う・・・わかっていても、心がついていかない・・・。
そんな場合の多くは、すでにその時点で心の病の影響が見られることがあります。
当ルームでは、精神的な不安定さから通院や服薬をされている場合は、まずは治療を優先することをおすすめしていますが・・・そこの部分がある程度回復しないと、この状態から抜け出すのは難しい・・・と、今まで様々な例を見てきて感じます。
また、精神的な不安定さがある場合、必ずといっていいほど体にも症状が現れており・・・その状態が長期に渡っていることも多く、「心身ともに健康に戻りたい」という思いが薄れている様子を見かけることも珍しくありません。
その場合、まずは心と身体の健康を取り戻すことが、自己憐憫から抜け出す出口になります。
自己憐憫から抜け出せないケース②
現実を直視できない人です。
「自分を可哀想がる」ことにフォーカスするあまり、「現実に起きていること」や「現状の中にある幸せ」に目を向けられない。
知人の家族の話ですが・・・
ある男性が、自分が生まれてすぐ母が亡くなり、父が苦労して兄弟姉妹を抱えながら育ててくれた・・・という環境で育ちました。
母を知らないからこそ、「幸せな家庭」に憧れが人一倍強く・・・良妻賢母になりそうな理想の女性と結婚し、子供が生まれ、マイホームを建てて、幸せな生活を送っていました。
しかし、ある日突然妻が事故で亡くなってしまい・・・心身喪失。
「自分は母を知らずに育ったこと」
「父が男手一つで苦労して子供たちを育て、まわりからも”可哀想”と思われていたこと」
このことから、もともと自己憐憫が強かった状態に・・・「妻に急に先立たれ残されて可哀想な自分」が加わったようでした。
実際、この方の周りには・・・成人して家庭を持った子供たちや孫(なんならひ孫も生まれそう)が近くにいましたし、一人暮らしをしている家には頻繁に子供たちも訪れていました。
しかし、本人的には「母を知らないで育った自分」「周りから”可哀想”と認定された自分」「妻に先立たれた自分」これらが大きなダメージとなり、
「可哀想な自分像」が膨らみすぎて・・・「今目の前にある幸せ」に目を向けられない状態でした。
そのため、口を開けば「自分は1人だ」「孤独だ」と言い・・・
夫婦そろっている人を見れば、「それに引き換え自分は寂しい独り身で・・・」と自虐をするものですから、
周りの人は会話するにも困り、距離を置かれていました。
子供たちは、父に対して自分達なりに精一杯誠意ある行動をしていましたが・・・
妻が亡くなり20年経っても「今目の前にいる自分達を見てくれない」父に対して、だんだん冷めてきました。
これが、数年前の話です。
現在、どうしているかというと・・・
男性はそのままの状態から変わらず、認知症になり症状が進み・・・
「自分は可哀想な境遇なんだ」「もっと共感しろ」と子供たちに強要したり怒りをぶつけるようになって、
「妻が生きていた頃は良かった」と亡くなった妻との思い出を、自分の都合の良い内容に改変して美化し・・・
「妻は素晴らしかったのにお前たちときたら・・・」と、妻と比べて娘たちを罵倒するようになり、子供たちみんなから嫌われてしまいました。
子供たちは形式上、父の生活のサポートをしていますが・・・
サポートをしている子供たちには感謝の言葉ひとつもなく罵倒や怒りをぶつけ、亡くなった妻にばかり感謝感謝という父に対し、家族の心の距離はすっかり離れてしまったとのことでした。
妻が亡くなったという現実を受け入れ、今そばにいてくれる子供・孫たちがいる幸せに気づけたなら・・・違う関係性を築けたかもしれません。
「自分は〇〇だから…」と言いたくなる瞬間は、誰にでもあります。
ただし、そこにい続けると、未来を奪うのもまた事実。
弱さがあっても、病気でも、メンタルが不安定でも、現実を直視できなくても、今ある幸せに気づけなくても・・・
本来、未来をつくる権利は誰にでもあるし、今の自分にできる形で前に進むことは必ずできます。
しかし、「自分は〇〇だから」と自己憐憫を続けることで、その未来は消えてしまいます。
たとえ自己憐憫を続けた状態でも、未来を諦めない選択ができるのは自分だけです。










