「やりたいことだけ」にロックオンすることの危険性
当ルームでいただくご相談の中に・・・
「やりたいことを見つけた!」
「これしかない!」
自分が興味あること、やりたいことを見つけて、それしか見えずにまっしぐら・・・というケースがあります。
やりたいことが見つかることは、一見すると素晴らしいことのように感じますが・・・
しかし、実際には「これしかない!」と思い込んだ瞬間、自分の中にある他の可能性を閉ざしてしまう場合があります。
本当はもっと自由に、
もっと柔軟に生きられるのに・・・
「やりたいこと」にロックオンすることで、本人が本来望む方向とは違う変な方向へ進んでいったり・・・
苦しさを感じるという例も珍しくありません。
「これしかない」という思い込み
未来が見えない状態は不安を感じるけれど・・・「これが自分の道だ!」と思えるものに出会うと、心の支えになり安心感も出てきます。
しかし、それだけにロックオンしてしまうと・・・
「他の可能性を見ない」「変化を拒む」「失敗を恐れる」という状態に陥ってしまうことがあります。
「やりたいことをやっているつもり」で、実際は「それに執着しているだけ」という状態。
やりたいことは「今の自分」にしか見えていない
「これしかない!」と思えることは、今までの自分の経験・知識・価値観を基に判断しますよね🤔
しかし、ここで忘れていけないのは・・・人は変化し成長するものだということ。
「今の自分」と「3ヶ月後の自分」は、違う考えかもしれない。
逆に、「今の自分」と「10年前の自分」の思考は全然違う!とケースもあります。
それにもかかわらず・・・「やりたいこと=これからも変わらない自分の願望」だと思い込んでしまうと・・・
たとえ、「他の選択肢を選ぶ自分」「視野を広げ変化しようとする自分」がいたとしても・・・
それを否定してしまうことも。
「やりたいこと」は、「今の自分に見えている一面」にすぎません。
もっと視野を広げれば、選択肢は無限に広がっています。
「目的」と「手段」を混同
たとえば、ヒーリングを習う人の中には「人の癒しに関わりたい」と思う人も多いです。
最初は純粋な想いで始めたはずが・・・いつの間にか「私はヒーラーになって癒しの仕事をする」という感覚に縛られてしまうケースもあります。
本来、「人の癒しに関わりたい」というのは「目的」であって、「ヒーリング」はそれを叶えるための「手段」にすぎません。
ある時は、癒しの手段は「言葉」や「文章」かもしれないし・・・
家庭など中で自然に人を癒している形かもしれません。
重要なのは、形を固定しないこと。
本質が「癒しに関わること」であるなら、形はどんどん変わっていい。
本当の目的を見失うと、手段にしがみつき、それ以外の可能性や変化・進化を恐れるようになります。
たとえ手段がなんであれ、本当の目的は形を変えてでも達成可能である・・・という視点を持てるかどうかで、人生は大きく変わります。
ここで、ひとつ例を紹介すると・・・
私が会社員時代に知り合ったAさんという方がいます。
彼女は30代で、学校卒業後は働いた経験がありません。
就職活動の際、興味が持てる職業がなく・・・「やりたいことを仕事にしたい」と思っていましたが、「やりたいこと」が見つからず年月が経過していました。
そんな状況から抜け出すアドバイスを得ようと、占いを受けてみたところ・・・
すっかり占いの世界にはまってしまい、「自分も提供する側になりたい!」という意欲が湧いてきました。
Aさんは、占いの技術を学んだ経験はありませんが・・・幼い頃から「自分には霊感がある」と感じていました。
それを活かし、「占い師になるしかない!」とロックオン。
その理由は・・・
もともと自分は「普通の会社員にはなれないだろう」と感じていたこと、
「学ばなくても今持ってる能力を活かしてできる仕事」であること、
「普通」とはちょっと違う「特別感」を感じられる仕事であること、
「一般的なアドバイス」じゃないものを提供することで、受けた人から感謝され役に立つこと、
一般的なアルバイトをするより、時給が良いこと・・・などが挙げられました。
占い師になることは、簡単でした。
Aさんは今の時代にマッチしたツールを使いこなし、パフォーマンス力が高い発信で容易に顧客を獲得できたからです。
しかし、出だしは良かったものの・・・進めていくうちに心が病んで辛くなってきました。
その理由は、Aさんは占い師としてやっていくために必要な精神的なケアの部分やコミュニケーション力が欠けていたからです。
霊感を使って内容を提供することはできても・・・お客様と接している中で蓄積していく自分へのダメージの対応ができないこと、
伝え方、配慮の仕方、内容をまとめる語彙力などが、長きに渡る引きこもりの生活で停滞していたからです。
また、もともと精神状態が不安定であり・・・それに対するケアを薬に頼りきりで、自分自身でなんとかしようと改善することを一切していませんでした。
知り合ったあとの数年間交流が途絶えていたAさんでしたが・・・私がヒーリングルームを運営していることを知り、理解を得られるだろうと考え相談してきました。
しかし、私はAさんのもともとの精神状態を知っていましたし・・・相談時もその精神状態から変わっていないとの申告でした。
そして、占い師になるためには、自分のケアやコミュニケーション力が重要だということも自分の経験から知っていましたので・・・
Aさんの「占い師になる!」という未来の選択肢はそれはそれでいいとして・・・
自分自身を整えるために「今できる準備」をすることや、占い師以外の「他の世界」も見て、いろんな人と接して話す機会を持ち、視野を広げる選択も取り入れてみては?と話してみましたが、
当時「自分は占い師になるしかない!」とロックオンしたAさんの耳には届きませんでした。
後にAさんと話したところ・・・本当は、
会社員は自分には無理だろうと判断
↓
自営でできる「なにか」をやりたい・・
と感じていたところ、
占いを受けることで興味を持ち、はまった。
昔から霊感があるから・・・占いなら活かせるし、一般のバイトよりラクに稼げる!
自営でできる「なにか」=「占い師しかない!」という結論にいたったとのこと。
今考えると・・・本来の目的は、「自営でできるなにかをやりたい」わけであり、
占いはその手段としての選択肢のひとつにすぎなかったんですね・・・と言っていました。
現在のAさんは・・・
占い師を辞め、自分が興味を持てる分野のアルバイトを、1日短い時間の短期間勤務でいろんな業種・職種を経験しています。
そこで関わる様々な人とのコミュニケーション、まだまだ自分には「知らない世界」がたくさんあることに気づき、ひとつひとつ学び対応しながら・・・自分自身をケアする方法も身に着けています。
まだ「何者にもなれていない」と笑うAさんですが、以前よりも視野も選択肢も広がり着実にステップアップして、日々の新たな発見が楽しい!と話していました。
可能性を狭めるのは、「恐れ」と「比較」
「これしかない!」と思ってしまう背景には、実は「恐れ」が隠れている場合も多いです。
・他のことをやっても、上手くいかないかもしれない
・今さら方向性を変えるなんて、恥ずかしくて言えない
・途中で投げ出したら、誰かに否定される気がする
こんな不安が、「今の自分を守るため」に限定した思考を生みだすこともあります。
また、世間一般と自分を比べることで、「誰かみたいに活躍したい」「自分も早く結果を出さなきゃ」「人がやってないようなことをやってすごいと思われたい」と焦り、ますます自分の枠を狭めてしまうことも・・・。
しかし、人生は長く・・・早く結果を出すことよりも、自分のペースで走り続けることの方が重要です。
焦りや比較から生まれた「これしかない!」は、本当の自分を見失ってるよ~というサインかもしれません。
「広げる」ことは、「選ばない」ことではない
「可能性を広げる」と聞くと、「具体的に何も決められない」「方向性が感じられない」と思う方もいるようですが・・・
実際は逆です。
可能性を広げるとは、選択肢を増やした上で、最適な選び方を知ることです。
それは、「どんな未来にも対応できる自分で在る」という柔軟さを表します。
一つの選択にしがみついて執着するよりも、どんな変化にも対応できる「柔軟さ」を持つ方が結果的に人生は豊かになっていきます。
自分の可能性を閉ざさないための3つのステップ
「今、やりたいこと」は「仮」でOK!
今、この瞬間自分が「これしかない!」と思うことは、当然ながら「今の自分」にとってのこと。
極端な話ですが、1分先には別のことに変わっている可能性だってあるのです。
だから、「それしかない」と限定せずに・・・「未来に自分が目にするであろうあらゆる可能性」を受けいれる柔軟さを持つことが重要です。
「やりたい」「これしかない」という動機を掘り下げる
「やりたい」「これしかない」の裏に、どんな動機が隠されているか?
自分の気持ちに目を向けましょう。
たとえば、さきほどのAさんの例では・・・
最初は「普通の会社員は無理だろうから、自営しかない」という動機でしたが・・・
結局、そんな「一択」ではないことに気づき、後に様々なアルバイトを体験しました。
自分が思う「普通の会社員」のイメージや、「自営」に対するイメージなどを掘り下げていったAさんは・・・「だからといって占い師一択しか見えてなかった自分」に対し、後に苦笑していました。
「変化」は「成長」につながる
視野を広く持つと、今までの思考や行動の選択肢が増えるので変化します。
Aさんの例では、「占い師一択」の視野から・・・自分がそうなろうと思った動機を見つめ、「実際やってみてどうなったか?」を冷静に見つめた結果・・・
占い師をやるなら、自身の精神の不調を整えることは非常に重要であることに気づいたし・・・
今の自分の状態ではコミュニケーションに問題があるという現実を受け止めました。
その結果、占い師にこだわらず・・・まずは自身のケア、いろんな世界の仕事を体験しそこで様々な人々と関わることを選択肢に取り入れました。
「自分の基盤づくり」が大切だと気づいたんですね🤔
Aさんにとっては、「なにをやりたいか?」はその後の選択肢だったのです。
「これしかない」と思ったときは、視野を広げるタイミング
「これしかない!」と思ったとき、一見やる気があって自分の中では筋が通っているように思えるかもしれません。
しかし、その裏側には見えない不安材料が隠れていることも多いもの。
もし今、「これしかない!」と感じているなら、それは次のステップへ進む前のサインかもしれません。
「これしかない!」をいったん脇に置いて・・・
そう考える動機や、本来の目的のための手段は本当に他にはないのか?を客観的に見つめてみましょう。
「自分で思っていた以上に、もっとたくさんの選択肢、可能性があったんだ!」と気づくことでしょう。
多くの場合、「頭で考えている」うちはまだ「仮の目的」です。
本当に心から望む方向は、行動した先に見えるもの。
たとえば、「カウンセラーになりたい」と思って始めたけれど・・・
実際にやってみたら「人の話を聴くのに向いていない、言葉で伝える方が向いている」と気づく人もいますし・・・
「教える仕事をしたい」と始めたけれど、やってみたら「人を育てるより、自分が探求する方が楽しい」と感じることもある。
どちらも失敗ではなく、自分の本質に近づいた結果です。
最初の「これだ!」は、スタート地点であってゴールではないのです🙂










